ひまわりの花を飾りつけたケース

昔なら「何だ?祭壇がないじゃないか!」と親族から文句が出ることもあった生花祭壇も、今ではずいぶんよく見られるようになりました。
生花祭壇とは、これまで一般的とされていた伝統的な白木の祭壇を用いず、代わりに季節の花々で作った祭壇のことです。
そもそも太古の昔より、人類は死者の尊厳を保つために、墓に花を飾っていました。
イラクのシヤニダール遺跡で発掘されたネアンデルタール人の骨に、花粉や花弁がついていたことがわかっています。
ネアンデルタール人が地球上にいたのは、今から20万年前から2万年前です。
ネアンデルタール人が死者に献花していたかどうかについては、専門家により諸説あるようですが、そんな大昔から人類は死者に花を手向けていたらしいのです。
これに対して、白本の祭壇が登場したのはわずか55年ほど前の昭和30年(1955年)ごろです。
そしてその後、社会が変化してお葬式が大型化するにつれて、祭壇は2段、3段と大きく豪華になっていきました。
実は、伝統的と思いがちな白木の祭壇の歴史はごく浅いものなのです。
これに比べれば、ある意味、生花祭壇はより伝統的なお葬式のやり方と言っていいのかもしれませんね。
最近では季節の花を用いた生花祭壇もかなり増えてきましたが、それでも一般的なのは従来からある自い菊で飾った祭壇です。
「花が好きな人だったから生花祭壇を使った葬式をしたいのだけど……」
ひまわりの花を飾りつけてお葬式を行ったこのケースは、そんな遺族の相談から始まりました。
一般的な生花祭壇では白い菊を使いますが、従来のお葬式のイメージが強いことは否めません。
菊の生花祭壇では、やはりお葬式がただ悲しくさびしいものにも思えてしまいます。
「故人はとにかく明るい人で、さびしいお葬式を嫌がっていたんです」
葬儀社は遺族からこう聞き、偶然、故人が亡くなったのが夏だったこともあり、故人の明るい性格にも似合うひまわりを使った生花祭壇にしてはと提案したといいます。
こうして、ひまわりで飾りつけしたお葬式が実現したのですが、故人との最後の想い出づくりのために遺族自らが飾りつけなどの共同作業を行う家族葬であっても、生花祭壇を使ったお葬式に限ってはこれがなかなか難しいのです。
というのも、まず生花祭壇には大量の花が必要になりますが、これを一般の人が調達するのは難しく、どうしても葬儀社に依頼することになり、飾りつけも生花職人が行うのが普通です。
ただこのケースでは、大量のひまわりの用意は葬儀社に任せましたが、飾りつけの一部を遺族が行いました。
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やはり、こうした共同作業をすることが故人への何よりの手向けになりますし、大事な家族を失って傷ついた心の癒しにもなるのです。
たくさんのひまわりの花に飾られた葬儀会場は、明るいイメージでお葬式の場とは思えないような雰囲気になりました。
「さびしいお葬式を嫌がっていた故人も喜んでいるでしょう」と遺族も満足されていたようです。
前に紹介したケースと同様に、遺族や参列者は夏がきてひまわりを見るたびに故人を想い起こすのではないでしょうか?
生花葬の大きなメリットの一つは、故人が亡くなった季節が春なら桜を、秋ならコスモスを……というように、その季節がやってくるごとに故人を偲ぶきっかけになるところだと思うのです。

お孫さんがコンビニで買ってきたお菓子をお供えしたケース

お葬式では、小さな子供は「静かにしていなさい」、「控え室に行ってなさい」と邪魔者扱いをされてしまうことが多いようです。
まだ幼いので無理もありませんが、小さな子供にすれば、お葬式とは何のことか、何か行われているかがわからないものです。
でも、おじいちゃんやおばあちゃんのお葬式の場合、故人にとって一番可愛いのは何といってもお孫さんなのです。
ある意味、故人にかわいがられていたにもかかわらず、小さな子供はすみに座らされているというのが、一般的なお葬式でした。
幼くて、死やお葬式の意味がわからない子供に形ばかりの焼香をしてもらうよりは、お子さんやお孫さんたちにも故人のために何かをしてもらったほうが、子供たちもお葬式に参加している実感が得られるはずです。
そこで、このケースの家族葬では、お孫さんたちに生前おばあちゃんが好きだったお菓子をお供えしてもらったのです。
一般的なお葬式では、仏事用供物という砂糖でできたお菓子などをお供えしますが、このときはコンビニや菓子店に行けばどこでも手に入る、本当におばあちゃんが生前に食べていたお菓子をお孫さんたちに買ってきてもらいお供えしました。
お葬式にはさまざまな慣習がありますが、実は、お供え物についてはこうしなくてはならないという決まりはありません。
お孫さんたちが、亡くなったおばあちゃんの好物のお菓子を憶えており、彼ら白身が店で買ってきてお供えをすることに故人への想いが込められているわけです。
お孫さんたちも家族みんなと同じ「行事」に参加できるので嬉しそうでしたし、何より亡くなったおばあちゃんも喜んでいるはずです。
そればかりでなく、「幼いながらも、故人のために何かをやってあげたい、という気持ちが嬉しい」と親御さんも喜んでいたのが印象に残っています。
こうしたちょっとした工夫は特別に費用がかかるわけではないのですが、残念なことに一般的なお葬式ではまず行われません……。
こうしたことを取り入れることで、幼い子供たちもお葬式に参加できるのですが。
このケースのほかにも、お葬式で行われる「献灯の儀」に小さな子供たちに参加してもらうという家族葬もありました。
献灯の儀とは、祭壇のローソクに遺族が火を灯し、故人が迷わずあの世に行ってもらえるよう願い、冥福を祈る儀式ですが、一般的なお葬式では小さな子供は参加しない場合がほとんどです。
たとえ幼くても、前に述べたケース同様に、お葬式に参加してもらうことが大事なのです。
子供たちはそのお葬式自体は忘れてしまうかもしれません。
でも、昔、お葬式で火を灯したということは意外に憶えていたりするものです。
例えば、大人へと成長し、結婚式のキャンドルサービスのときに想い出すかもしれません。
故人にとっては、理由はなんであれ、想い出してくれるのが一番の供養なのです。
小さな子供に焼香をしてもらうことが無意味とまでは言いませんが、やはりまだ幼い子供には意味がわからないでしょう。
それよりは、こうしてローソクの火を灯したり、亡くなったおばあちゃんのためにお菓子を買いに行くというほうが、子供にとってははるかにわかりやすいはずです。
やはり、彼らがいかに幼くても、この子供たちのように故人への想いを形にして偲んで初めてお葬式と言えるのではないでしょうか?
そして、こうしたことをいろいろな方法で形にしやすいのが家族葬なのです。

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